声の大きいひとりごと

全ては私の愛ゆえの独断と偏見。

海をあげる


この本の感想を的確に伝える言葉を私は持たない。


ずっと知っていたのに知らないふりをしていたこととか、見えているのに目を背けていたもの、そういうものを見ろ!って頭を掴まれたような気分。


読んでよかったと思うし、読まなければよかったとも思う。


海をあげると言われて、受け取ってしまったと思った。怖くなった。


わからないことばかりだと思う、知らないことばかりだと思う。読みながらノンフィクションであることを忘れるほどには私は遠いところにいて、でも現実だよなと気づけるほどには遠くに行けない。


腕を縛られて泥水の中を歩いているみたいだ。

足は縛られていないから歩かなければならないけれど、泥水のせいで足元は見えず、戻ることもできない。

目隠しされていればよかったものを、目は見えるから周りの景色もガラスの天井も無視できない。

耳を塞ぐこともできないから、周りからは善意と悪意が鳴り止まない。



私は子供たちに綺麗な海をあげられない。

自分の生活を守ることで精一杯でごめんなさい。遠くの友人を助けてあげられなくてごめんなさい。


私は明日からも忘れて生きていく。

それでも目を背けずにいたいし、鈍感になりたくないと思う。